Cancer changes everything, but nothing at all

がんのクライアントさんが増えています。

がんの場合は通常より2〜3倍の時間をかけて処方を考えます。通常、幾つかある有料データベースで薬の相互作用を調べるのですが、こと、がんに関しては一人で確認せず、サプリの会社のカスタマーサポートに必ず確認を入れます。

なぜならば、臓器によっても、がん細胞の種類によっても、ステージよっても、転移の有無によっても、ご本人の意思によっても、治療方法が全く異なります。また、副作用によっては摂取する薬の数も増え、これら様々な状態に対応するよう、治療の邪魔をせずに、かつクライアントが求めるものを実現させてあげたいと思うと、薬の相互作用を調べるだけでも私一人の許容範囲を軽く超えます。なので、得られるアドバイスは確実に得ます。複数から。

ナチュロパスは豪州ではきちんとした資格なので、豪州にコミュニティもあり、インダストリーも存在し、必要な専門的サポートを受けられる体制が整っています。

それらを最大限利用し、エネルギーも時間も、倍以上使います。

過去1ヶ月だけでも、1人は手術・抗がん剤治療・放射線治療後、2人目は手術ができないため抗がん剤治療を続け、副作用を抑える薬も多く摂られている方、3人目は3大治療を行わないと決められている方。様々です。

先日、最後の処方箋を書き終わり、ほっと一息ついて、お休みの時に海外ドラマを見ていました。好きな医療系ドラマ。

その中で、がんで10%の成功率(生存率)の手術を受けるか、もしくは手術を受けずに1年の余命をQOL(生活の質)を保って楽しく過ごすか、の2択のうちの1つを穏やかに選んだユダヤ教のラビ(キリスト教の神父にあたる)に、同じく自分もがんを持ち化学治療に不安を持つ現役の医師が聞きます。「なぜ、穏やかにその選択ができたのですか?」という医師からのラビへの問いから会話が始まるのですが、「明日から治療(抗がん剤治療)が始まるが、恐れ、イラついて、怒りを感じる」と言う医師に、ラビが彼にかける言葉。

「Cancer changes everything, but nothing at all」

直訳は「がんはすべてを変えるが、また、何も変えることはない」。ドラマの和訳は「(がんによって)人生は変わっても君は変わらない」。和訳もとても上手だと思いました。でも、この一言、とても深い。

がんは診断が下った時からその人の生活のすべてを変えます。それまで現実ではなかった死が身近になり、当たり前だった日常が突然当たり前ではなくなる。

この医師のように人はショックを受けた後に、様々な段階を踏んで感情を変化させていくことで徐々に現実を受け止めていくようになります。例えば:

ショック → 否定 → 心配・恐れ → 怒り → 悲しみ・落ち込み → 受容 → 希望・コミットメント

最近はグリーフの研究者だったキューブラー・ロスの「死の受容のプロセス」が、死やグリーフだけでなく、離婚や不妊治療など様々なショックやストレスを伴う出来事においての人々の感情プロセスの説明に使われることが多いでしょう。

否認 → 怒り → 取引 → 抑うつ → 受容

今回のコロナ騒ぎもそうです。当たり前の日常がなくなるショック・不安・恐れが、怒りの形に変わり発散される。3.11の時は自分も同じ経験があります。多くの人の不条理な死に対するショックが、日常の些細なことで怒りの形で放出される。

今回のコロナ騒ぎも、毎日のネガティブなニュースで、SNSやテレビから離れる人が多くなっていると思います。おそらくコロナ自体のことよりも、SNSで様々な形に変わった人々の怒りの感情に触れ、疲れを感じているのだと思います。私もそうです。

でも、本来、他人に対して向けるべきではありませんが、怒り自体はある意味、健全な感情処理プロセスの1つ。

SNSを通して首相や政府に対して怒りを発散できるならばまだいい。でも、がんの人々は、サポートをしてくれる大切な家族にはもちろん、この感情のプロセスを誰にも言えず、一人でこの感情を処理しています。

私も、死には至らない病気だけれども、QOLに大きく影響し、競争社会において弱者のレッテルを貼られるということ(寛大な会社だったので立場には影響しませんでしたが)、働けなくなるかもしれない不安、いつ治るかわからない苦しみ、を経験してはいます。

でも、他の慢性病のように具合の悪さを感じながら時間をかけて徐々に心の準備ができていくものではなく、がんは、場合によっては健康だった人が、或る日突然、食事も生活も一変し、その上、死の可能性、転移の恐怖、養わなければいけない家族の存在、常に自分でジャッジして決めていかねばならない治療方針、常につきまとう不安。

がんはすべてを突然変えてしまいます。

でも、自分らしく、どう生きていきたいか。自分自身、自分の本質、その人らしさ、人間性、自分のあり方、自分の生き方、自然の存在、光の存在、家族に対する愛。環境や生活は変わるけれども、本質的なものは何も変わりません。

そのようなことが込められている短い一文。とても深いなぁと感動しました。

どの病気もそうですが、特にがんはその病名が人に与えるショックもあり、孤独の中で治療を続ける人も多いです。そして、病気に向き合う姿に、その人らしさが一番表に出る病気な感じがします。

もちろん、私のコンサルを受けてくださる方々は自分自身を見つめ直して食事も生活習慣も変えていきたい、と模索している人々なので、その姿は美しい人ばかり。むしろ、人として、私が勉強をさせてもらっています。

2倍、3倍の時間をかけて、身を削って仕事をする価値のある人ばかりです。私を大切な治療の一環に関わらせてくださり、本当にありがとうございます。

ネガティブな感情は否定しないでください。人の心は自己治癒力があり、「ああ、私は傷ついているんだ」「怒っているんだ」と認めていくことで自然とその先に変化していきます。

がんはそもそも普段ネガティブな感情を抑え込む良い人に起こりがちな病気です。恐れも怒りも発散させ、浄化・変化させていっていただけたらと思います。